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巨尻妄想N氏の場合~その5~





私の視界は三つの巨大な尻によって完全に塞がれた。

このギュウギュウ詰めの満員電車の中でこんな目にあっている私に気づいている人は誰一人として

いないのか?   私は完全に人ごみのエアースポットに入り込んでしまったようだ・・・

塞がれているのは視界だけではない。鼻も、口も、押し寄せる巨肉の波にもまれ、呼吸する事すら

ままならず、声をあげて助けをもとめる隙すら皆無に近い状態だ。

おまけにひどい暑さ・・・この飽和状態の車内ではクーラーも殆ど意味をなしてない。

汗でムレムレの雌臭でむせかえりそうだ。「く、苦しい・・」

昨夜の悪夢が蘇ってきた。これは一体現実なのか?まだ夢の続きなのだろうか?

昨夜からの一連の体験はとても現実離れしていてありえないはずなのに、このリアルな苦痛は

どういう訳なんだ・・・

このまま私はまた気を失うのだろうか・・・ いっそ失いたい。

そうすれば昨夜のようにこのきっとこの苦しみから解放されるに違いない。

しかし今回はそう簡単にはいかなかった。電車の揺れにあわせて巨大な尻が右往左往に動くため、

もみしだかれながらも、僅かに呼吸ができるからである。 そして鼻をつく強烈な雌臭がまるで

気つけ薬の役割を果たしているかのように、意識の喪失を許さないのである。

このどこにでもあるごくありふれた光景、日常の一部である満員の通勤電車の中で、

今、非現実的な出来事が起こっているのである。

私はとてつもなく巨大な三つの臀肉にもてあそばれ、人間の尊厳や男のプライドさえも奪われつつある。

しかも誰にも気づかれずに・・・白日夢のようにそれは起こっている。

意識を失う事さえ許されずに、私はただなすがまま、耐えるしかないのである。






どれくらいの時間が経ったのだろう。

私には途方もない、永遠のような時間が流れた。しかし実際は10分程度なはずである。

朦朧とする意識の中でアナウンスが聞こえ電車がブレーキをかけたのが感じられた。

錦糸町駅に到着したのだ。当初はここで下車するはずだったが、もうどうでもよかった。

私にはこれからどうなるのか想像する気力さえもはや残っていなかったのである。

電車がとまり、扉が開いた。 大勢の人波に押されながら私はホームに投げ出された。

そう、投げ出されたという表現がぴったりだろう。私は立ち上がる事も出来ずに、ホームにうつ伏せに

横たわって瀕死の虫のように僅かに呼吸をしているのだ。まさに虫の息ってやつか・・・

髪はぐしゃぐしゃに乱れ、背広はしわくちゃで倒れている私を大勢の人が避けて通りすぎて行く・・・

「やっと・・やっと解放された」そういえばあの三人の巨女たちは一体何処へいったのだろう?

その時、”コツコツコツ”と足早にこちらに歩いてくるヒールの音が聞こえた。

音のする方を見るとさっきの三人の大女が私の方へ向って歩いて来るではないか!

「あ・・・あっ・・」

三人の巨女は私の前に止まり、そしてヒールで思いっきり私を踏みつけた!

そう汚い虫を踏み潰すかのように・・・


断末魔の叫びとともに私の内臓はつぶれ、もう意識はなかった。

tatumi01.jpg


                        巨尻妄想N氏の場合 =完=









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[ 2010/02/07 15:20 ] 巨尻妄想N氏の場合 | TB(0) | CM(0)

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